高3の綾の前に初恋の彼が現れた。5歳の夏、森で迷子で泣いていた綾は、彼の弾くピアノの音に導かれ助けられていた。

12年振りの彼は冷めた態度で昔のことを覚えていないと言う。天才的に上手だったピアノも辞めて留学先から帰ってきたとも。

別人のように輝きを失った彼を立ち直らせたいと綾の恩返しが始まる。拒まれても正面からぶつかり悩む日々の中、綾は不思議な白い世界に迷い込む。

果てのない通路に無数の扉。不思議な管理人に「彼の扉」と言われた部屋を覗き、ピアノを辞めた事情を知る。

右手にハンデを負い、ピアニストの夢を諦め絶望している彼を救いたいと、綾は現実でも白い世界の扉の中でも奮闘する。

綾の懸命さは音楽祭で実を結び、彼は再び音楽の道へ。

心を通わせた二人だが、卒業式の日に彼はウィーンに旅立ち別れが訪れた。

六年後に想い出の場所で再会し、綾はデビューコンサートチケットと指輪をもらう。