『今、扉を開けて 広野に踏み出す僕達
恐れることはない この道は輝く未来に続いているから
繋いでいた手を離し それぞれの明日へ
君は右に 僕は左に
別の道に進んでも 色褪せない想い出 心の糧に』
この歌詞、なんだか私と奏のことみたい。
全てがぴったりというわけじゃないけど、扉とか、想い出とか、別の道とか、重なる部分がたくさんある。
この曲の伴奏は簡単なので、歌詞に自分を重ねて浸りながら弾いていた。
今朝、音楽の先生に短くしてと言われた間奏部分を弾き終え、歌は二番に。
『閉じこもっていた僕を 連れ出した君
泣いてもいいから前に進めと 背中を押してくれた
ありがとうの言葉では 気持ちを伝えきれない
だから見ていて 遠くで 僕の生き方を』
みんなの歌声に、すすり泣く声が混ざり始める。
この歌が終われば卒業式は終わったようなものだから、それぞれの胸にこみ上げるものがあるのだろう。
私は泣かないよ。
奏に涙を見せたくない。
笑顔で送り出すと、決めているから。
奏は今、どこにいる?
体育館を出て、歌声を後ろに、正面玄関に向かっているところ?
それとも、もう雪道を歩いているのかな。
声も届かないし、私の姿も見えない場所まで離れたかな。
それなら……。


