そんなふうに思ってくれていたんだ……。

お互いに相手を想って選んだのは、別れるという同じ結論だった。

早く学校に来てよかった。

きちんと話し合えてよかった。

あやふやな交際を続けて、忙しさに連絡が途絶えてしまうより、ずっと綺麗な恋の終わり方だ。


大切な話を終えたとき、音楽室のドアが開けられた。

入ってきたのは、音楽の女の先生。

誰もいないと思っていたのか、少し驚いてから「ちょうどよかった」と言われた。


「斉藤さん、今日の伴奏のことなんだけどーー」


卒業式のプログラムの終盤に、卒業生による全体合唱がある。

その伴奏を私が頼まれていた。

先生は音楽準備室に入っていき、伴奏用の楽譜を手に戻ってきて、真ん中辺りを指差し注文を付けた。


「間奏部分、ちょっと長いから、適当に編曲して短くしてほしいの」

「え……。それじゃ、この小節の後は、ここに飛ぶ感じで……」

「そうね、それでいいわ。
なんかね、来賓の祝辞が一名増えちゃって、あちこち時間を削らないといけないのよ。合唱にまでしわ寄せがくるなんて、やーね」