切なさが込み上げ、顔をしかめると、スポットライトは消えて、奏の夢の光景も跡形もなく消え失せた。
元の重苦しい黒いだけの景色に戻り、私が歩き出すと、今度は右斜め前方に同じような明るい空間が出現した。
光の中に踏み入ると、そこはステージの上。
黒光りする立派なグランドピアノが中央に設置されていて、客席から拍手が湧く。
舞台袖から出てきたのは、フォーマルスーツ姿の凛々しい奏で、一礼するとピアノの椅子に座り、鍵盤に両手を乗せた。
これは、デビューコンサートの光景。
客席の最前列のど真ん中に、小さな人影を見つけた。
目を凝らすと、無邪気な顔した五歳の私。
奏は成長した姿でピアノに向かっているのに、招待された私は五歳のままなのか。
小さな私と約束した、デビューコンサートに招待するという願望も、この部屋の中に閉じ込められているみたい。
ますます切なくなり、私は大きく息を吐き出した。
あのときの約束が、奏の心に負担を与えていたのかもしれないと、やるせない気持ちになっていた。
目の前の夢は、奏が一音を鳴らす前に消えてなくなり、再び闇に包まれる。
周囲を見回すと、今度は真後ろに明るく丸い空間が現れている。
そこまで引き返して目にした景色は、親密でホッとできるような、あの場所だった。


