奏 〜Fantasia for piano〜



ここは……?

黄みがかったライトに照らされ、私はステージ上に立っていた。

どうやら中規模のコンサートホールのようで、薄暗い客席に目を凝らすと、奥の奥まで観客がびっしり。

一瞬ドキリとしたけれど、この世界で私は幽霊なのだと思い出し、注目されているのが私じゃないことにホッとした。


ステージの真ん中にはグランドピアノが一台置かれていて、誰かがピアノを弾いている。

ピアノのお尻の位置にいる私は、誰が弾いているのだろうと、回り込もうとした。


この曲は、ベートーベンのピアノソナタの……何番だったろうか?

丁寧で落ち着いた大人っぽい演奏で、すごく上手だけど、奏の音じゃない。


ピアノを半周して、演奏者が見知らぬ金髪碧眼の青年であることを確認した。

この人のコンサートなのだろうか?と思ったけど、違うみたい。

弾き終えると拍手が湧き、彼はお辞儀をして舞台袖に引き返した。

客席が明るさを取り戻すと、前列にズラリと並ぶ審査員が、手元の用紙になにかを書き込んでいるのが見えた。