視線を幼いふたりから隣に向けようとしたら、違和感を感じた。
それは管理人に対してではなく、その背景に対して。
私の記憶にあるピアノの部屋と、微妙に違っているような……。
その違和感の正体は扉だった。
六角形のピアノ部屋の入って左側の壁に、実際にはない、白い扉がある。
「そこの扉は?」と問いかけると、管理人は扉を目視せずに答える。
「ふたつめのお部屋でございます。
お客様のお求めに応じて、お部屋の数は常に増減いたします」
ふたつめの部屋。
もしかして、そこにピアノのを辞めた理由が隠されているのでは……。
楽しそうな幼いふたりから逸れて、私はふたつめの扉の前に立つ。
ドアノブに手を掛けようとしたら、触れる前に勝手に勢いよく開いて、体が中に吸い込まれた。
後ろにバタンと扉の閉まる音を聞き、慌てて振り向いたら、扉は霞のように消えて戻る道を失ってしまった。
ど、どうしよう……。
管理人の姿もなく、不安に襲われていると、私の前を誰かが通り過ぎた。


