「かしこまりました。では、お手をどうぞ」
私に向けて腕を差し出すということは、どうやら腕を組めと要求しているようだ。
日本で生まれ育った私は、そんなエスコートをされた経験がなく、少々抵抗を感じるけれど、連れて行ってもらえないと困るので、そっと管理人の腕に掴まった。
すると、体がフワリと浮いて、ロビーから通路の入口までゆっくりと運ばれる。
先が見えないほどに長く、白い通路。
天井から射し込む白い光が、床に幾つもの円を描いている。
その両サイドの壁に、ランダムに並んだたくさんの扉を見た。
そこからは前回同様、新幹線のスピードで運ばれて、あっという間に奏の扉の前に到着した。
「どうぞ」と言われ、コクリと頷く。
管理人の腕から手を離し、白い扉の鍵穴に、そっと鍵を挿し込みゆっくりと回した。
カチャリと小気味いい音が通路に反響するのを聞いてから、ドアノブを回して扉を開けた。
扉の先は、前回と同じ、六角形のピアノ部屋に繋がっていた。
でも前回と違って真夜中ではなく、明るい日の射し込む日中のようだ。


