奏 〜Fantasia for piano〜


白い大理石の床に、そびえる六本の白い柱。

目視できないほど高所にある天井から、白い光が降り注いでいる。


二ヶ月ほど前も、まずはこのロビーに出た。

間違いない、ここは白い世界。

本当に来れたんだ……。


「おや、あなたはいつぞやのお客様。
またいらしたのですか?」


後ろに聞き覚えのある声がして振り向くと、白いガーデンテーブルと椅子があり、浅く腰掛けた管理人が白磁の紅茶のカップを手にしていた。

私に声をかけた後、彼は優雅な仕草でひと口飲む仕草をする。

でも、カップには紅茶もなにも、入っていないようだけど……。


私が首を傾げると、管理人はカップの代わりにステッキを手に持ち、立ち上がった。


「テーブルもカップも形式的なものです。
私は人間のように、飲食物を必要としませんので」

「はぁ、そうですか……」


椅子から離れ、管理人が私の方へ一歩踏み出すと、テーブルセットと紅茶のカップが忽然と消えてしまった。

それを見ても、私はもう驚かない。

ここは私の理解を超えた世界で、不思議なことが起きて当たり前だと学習しているから。


それで、握りしめていた鍵を管理人に見せ、単刀直入に「奏の部屋に連れて行って下さい」とお願いした。