僕はずっと下を向いていた。

その人の顔を見ていたら、言いたいことも言えそうになかったから。


「―――その犬触らせて下さいッ!!」

「…はぁ?まぁ、いいけど」

「ありがとうございますッ!!」


僕はしゃがみ込んで犬を触った。

クリクリの目をしたミニチュア・ダックスフント。

―僕、犬派です。犬大好きッ!!


「犬好きなの?」

「はい、大好きですッ!!」


見上げて笑う。

さらさらした毛を撫で続けた。