「いい加減しろよ。違うだろ?」



「お前に何が分かる。何もかも苦労無く手に入れたお前に」



亮先輩のその声と共に、パチンと乾いた音が響いた。



手を上げたのはキャプテン。私の前には右頬を押さえた亮先輩がいて……



「俺がどれだけ苦しんだか分かってんのか?それなのに……あんな簡単に手ぇ出しやがって」



意味が分からなくて……もう私は、きょろきょろと首を振るしかない。



「抜け駆けだって全部お前の方だろうが」



「倉野に対してした事思い出せ。あの時は俺も二人は想い合ってんのかって思ったけど」



そこで一度言葉を切ると、私の手がそっとキャプテンの手で包まれた。



「俺の事が好き……だもんな?」



私の気持ちを知って、自信満々で嬉しそうに聞く笑顔に……私は一瞬で新しい恋に落ちた。



先輩でもキャプテンでもない……天城潤という人に、恋をした。