試合は昼前スタート。 移動のバスには既に部員さん達は乗り込んでいて……いつかを思い出して手が汗ばむ。 あの時……キャプテンがくれたキス。 それがどれほどの力を持っているか。 キャプテンは知らないよね? たかがキスでこんな風に思うなんて、私はまだ子供かもしれない。 それでもあのぬくもりと、幸せな感触を忘れたくない。 大切にしたいんだ。 懐かしい記憶を辿ってバスに乗り込んだ私に 「綾ちゃん、ここ座りなよ」 それは、先頭の席に陣取っていた亮先輩の声だった。