今度は力の弱まった腕で、しかしこれが沢井らしさ……なのかいつもの様に器用に片手だけで私を引き寄せる。 「今の俺にとって、綾はアイツの代わりなんかじゃない」 「アイツ……って??」 「中学ん時に付き合ってた女。アイツがテレビに映った俺を喜ぶから……カッコ良くなろうって必死だった。けど……」 真剣な声に、その腕から逃れようとする事を忘れていた。 「けどさ、俺が忙しくなったらあっさり寂しいからって他のオトコに乗り換えてさ。それでも……嫌いになれなかった」