いつもの汗の匂いじゃなくて。 つんと鼻の奥へ香るのは……甘い香水の匂い。 「頑張ってる姿見ようと思ったらさ、入れてくれないの」 「カッコ悪いけどさ、ダメって言われたら見たくなんじゃん?」 「で、演劇部から脚立借りて壁上ったら……」 いつの間にか、沢井の言葉はいつもの軽い感じに戻っていた。 「たら??」 「ありえないでしょ。いろんな奴らにこうやって抱き締められてんだもん」