「結愛ーっ、冷めるから早く来なさい!」

「はぁーい!」

お母さんとシチューのイイ匂いに呼ばれ、私、竹田結愛(たけだ ゆあ)はリビングに向かった。

12月ーーー冬休みも近づくと、毎日が寒くてたまらない。

今日みたいな日は、シチューが最高のご馳走に見えるんだ。

「いただきまーす!」

「お母さーん、お姉ちゃんのシチューの方が多くない?」

「だったらおかわりすればいいでしょ?」

「ふぁ〜い」

2歳下の妹、智沙(ちさ)がふてくされながら返事をした。

お父さんの帰りは遅いことも珍しくなく、今日も帰ってくるのは多分1時間後くらいだろう。

週の半分かそれ以上は、3人で食卓を囲む。


ピンポーン…

そんな中鳴り響いたインターホンに、お母さんがいち早く反応する。

「あれ?お父さんかしら。でも仕事が終わったって連絡はまだなんだけど…」

「回覧板とかじゃない?」

智沙が、シチューを食べながら、興味なさそうに言った。