暗い世界。

高いだけの塔の最上階で、不釣り合いに大きな王冠を頭にのせた彼が、言った。



「お星さまに、なれますか?」

「なれません」


端的に答える。

窓というには粗末すぎる四角い穴から見える暗闇を見ながら。



小さな王様。

暗い世界の、たった一人のさみしい君主。




「じゃあ、どうしたらお星さまになれますか?」


大きな瞳。

暗い世界に輝くコバルトブルー。



「どうして、星になりたいのですか」

「いつまでたっても、ここが暗いままだから」


小さな王様の、綺麗な金髪が揺れる。

ああ、風が吹いたのか。




「星になる人は他にいます。
今もまた、なりました」

「じゃあ、どうしてお空にお星さまが見えないのですか?」

「光が弱すぎるからです」

「ぼくがお星さまになったら、見えませんか?」


真剣な顔。

小さな拳をぎゅっと握って、私を見上げている。


笑ってしまう。哀しくて。



「うぬぼれないでください」


なんて賢い王様だろう。