「俺も手伝うよ」

「ダメよ!今日は私が作るの!」

「だけど、勤務初日で茜は疲れただろう? だから、俺が今日は作るよ。茜の手料理はいつでも食べれるだろう?」


 これから同じ部署で働くのだから好きな時に好きなだけ一緒に食事が出来る。そうだろう?

 すると、茜は急に俯いては黙り込んでしまった。その表情は暗く悲しげな様子に、茜のその反応はどういう意味があるのだろかと俺までも黙り込んでしまった。

 すると、今度は顔を上げて明るく振る舞う茜。さっきまでの悲しげな表情は微塵も見せない。そんな茜がとても痛々しく感じるが今の俺にはどうすることも出来ない。

 だから、茜の前ではいつも笑顔でいようと心に決めた。


「茜、一緒に作ろう。その方が美味しいに決まっている。前もそうだっただろう?いつも一緒に作っていたじゃないか。」

「うん、そうだね。じゃ、このキャベツみじん切りに出来る?」

「よし! みじん切りだな! 任せとけ。」


 茜との楽しくて懐かしい時間だ。小さな台所だから茜が近くに居るのを特に感じることが出来る。茜を肌で感じている様な錯覚に陥ってしまう。こんな時間は幾らあっても楽しいだろうと思えてしまう。


「茜、それ火力強すぎじゃないのか?」

「え? 私はいつもそんな感じで焼いているわよ。」

「そうなのか?」

「お好み焼き焼いたことないんでしょ? だったら私の方が先輩よ! いっつも作っているんだからね!」


 これまで家事仕事で俺に勝るものなど一つもなかった茜が、今度ばかりは俺より詳しくなってかなり得意気な顔をしている。俺に勝るものがあったのがそんなに嬉しかったのだろうか?


「威張りすぎ」

「違います! 私の方が上手なだけ!」

「信じられないな」


 舌をペロリと出す仕草はまるで子どものようだ。そんな愛らしい茜がまた見れるのは俺にとっては幸せな時間だろう。