「俺、まーたり先輩のことが好きです」


「うん」


「すごく、好きです」



あんなにも何度も言ってくれた言葉なのに、今が1番緊張しているような、照れているような表情をしている長谷部くん。


君にそんなにも可愛い一面があったなんて、知らなかったよ。


彼には内緒で、彼のことがより好きになる。




「私も長谷部くんのこと、すごく好き」




冷たくしても、私を諦めないでいてくれた君が好き。


えへへ、と笑う長谷部くんは私の着ているメイド服を小さく摘んでクイクイと引っ張った。


あの時、メイド服を着るように彼が言ってきた時に私が着る気になったわけは、長谷部くんのことが既に好きだったからだ。


それを認めざるをえなかったのだ。



「あの、メイド服のまーたり先輩が最高に可愛くて、俺、吐血しそうです」



そうか、ならば吐血させてやろう。


ぼんっと赤くなった顔を隠そうと私は長谷部くんに指示を出した。



「長谷部くん。両手を広げましょう」


「え、あ、はい」


「よし、そのままキープ」


「はい」



広がった腕に、勢い良く飛び込む。


途端に鼻をくすぐる長谷部くんの香り。



「ままままーたり先輩っ」



あ、これは家帰ったら吐血するだろうな。


そう思いながら、彼の腕の中で小さく笑って彼を見上げれば、ぎゅうっと抱きしめられた。



「俺、まじで先輩が好きです!」



もう何度も聞いてるんだから、知ってるよ。


初めは君のしつこさが嫌だったけれど、今は愛のあるそのしつこいさが嫌いではない。


でも言わせてほしい。



しつこいよ、長谷部くん。




fin.