「はー笑ったー」



ひとしきり笑った私は、未だに繋がれている手をぎゅっと握って王子様を見上げた。



「私の負けだね」



そう言えば、見開かれる瞳。



「私を笑わせられたら付き合うことになってるもんね」



うんうん、と頷く長谷部くんは必死で、ヘドバンしてるみたい。


ほんと変な人だ、面白い。


そんな君に1つ意地悪を言おうと思う。



「……遅い」


「えっ」


「私を笑わせるの、遅すぎ」



きょとんとした王子様に、一歩だけ近づく。


意地悪じゃなくて、秘密を暴露する、の方が近いかな。



「もうとっくに好きになってたよ」



もしくは、君の心を完全に掴んて離さない魔法の言葉。


胸が鳴る音の正体なんて、とっくに気付いていた。


ただ、認めたくなかっただけ。



「………ふぁっ!?」



思ってもみない言葉だったのだろう、動揺した彼は変な声を出した。



「うぎゃっ」



それから慌てて私の手を離し後ずさり、机に足を取られて大きな音を立てて転んだ。


それがおかしくて笑いながら、私は態勢を立て直した彼の前にしゃがみ込んだ。



「……まーたり先輩」


「うん?」



顔を上げた長谷部くんと、目が合う。


真剣な瞳を見て、この瞳好きだな、と密かに思った。