ちょっと待て長谷部くんよ。


そのウインク私に送るべきじゃないと思う。


ほらそこで君のことを熱心に見ている君のファンにウインクしてあげるべきだ。



「そこのあなた、こっち来て」


「えっ、嘘、馬渡先輩……!」



長谷部くんに熱い視線を送る女の子を私がいた場所に呼んで、その場に置いた。



「あの、馬渡先輩…?」


「じゃあ、あとはよろしく」


「えっ!?」



好青年長谷部と長谷部のファンを置いて、スタスタと校舎内に入っていく。


長谷部くんが面倒だから、女の子を呼んだのだが、その女の子の力になってあげられただろう。


なぜか女の子は長谷部くんより私を見ていた気がしたけれど、ツンデレなのだろうか。


とりあえず、今回はいいことをして、いい気分だ。



「うがっ」



教室に到着するまでの間に小さく鼻歌を歌い浮かれる私は、突如現れた人間にぶつかった。


170身長のある私が、人にぶつかるとはなんたる失態。



「あれぇ、まーたり先輩また会いましたね!」


………なんと白々しい。


さっきすごい速さで私の横を通って回り込んだくせによく言う。


男子サッカー部の中でも背の高い方である長谷部くんは身長が180くらいある。


ちくしょうめ、そりゃ突然ぶつかるわけだ。