だって、長谷部くんの方に行くというのは、相手チームに点数が入りそうになっている状態だというわけで。


要は我がチームからしたら、ピンチなのだ。


ということで残念だが長谷部くん。


私としては、あまり君の近くに行きたくはないのだ。



「なんでこの俺がまーたり先輩とは別のチームなんですかあああ」



しょげながらも未だに叫ぶ長谷部くん。


うん、それは監督に言ってくれ。



「あー、まーたり先輩が遠いです………遠いの辛い……」



ブツブツと声が聞こえるのを、もはや誰も聞いていない。


可哀想な長谷部くんだ。


そういう私だって聞き流している。


……つもりだけど、名前を呼ばれるものだから気になるようで、少し長谷部くんの方によそ見をしてしまった。



「馬渡先輩!」


「え」



そのせいで、どこからか鋭い声で呼ばれるまで自分の方にボールが来ていたことに気付かなかった。


気が付けば、私の横を抜けてボールが走っていく。



「覚!」


「はいはーい、俺に任せろやー!」



ボールは相手チームの足を渡り、あっという間に長谷部くんの元へ。


そして、彼の右足がボールを蹴って、



「必殺! 覚くんのスーパーミラクルシュート!」


ダサい掛け声と共にゴールに吸い込まれていった。