さよなら、もう一人のわたし

 大学に行くだけなら適当な洋服でいいが、どこかで尚志さんに会えるかもしれないという気持ちがあった。そのため、母親にこの前買ってもらったピンクの花柄のワンピースを着ていくことにした。
 駅に来たわたしを見て、弘は目を丸める。

「何よ」

「お前でもそんな洋服を着たらそれなりに見えるんだなって」

「褒めてないよ」

「冗談。京香は何を着ても可愛いと思うよ」

 彼は他意のない表情でそう言った。

「それを千春に言えたらいいのにね」
「悪かったな」

 わたしたちは顔を見合わせると笑い出した。

 大学まで行くと、外から構内を覗き込む。
 向こう側から生徒らしき男性の二人組が歩いてきて、思わず背を向けて身を隠してしまっていた。

「そんなにことをしていたら逆に怪しいよ」
「緊張するじゃない」
「入るから、ついてこいよ」

 弘はそういうとわたしの腕をつかんだ。
 わたしは彼にひっぱられるようにして大学の構内に入った。

 中は夕方の五時を回っているためか、人気があまりなく静かだった。