すると、お母さんはわたしの目の高さまでしゃがみこんで言った。


『たとえ離れても、ノアはずっと環を見守ってるよ』

『……本当に?』


わたしはお母さんではなく、ノアの方を見つめてたずねた。彼の黒い瞳がまばたきをして、うなずいたようにも見えた。


『ノア……本当に、ずっとわたしのこと見守ってくれる?』


ぱたぱたとしっぽが揺れる。ピンク色の舌がわたしの涙をなめて、くすぐったくて身をよじった。

金色が混じったクリーム色の毛。甘い匂い。背中の茶色い小さな印。

ぜんぶが愛しくて、ぜんぶがわたしの光だった。


『これからも見守っててね。絶対、絶対だよ……!』


ねえ、ノア。幼いわたしが一方的に交わした、あの約束。

君は、ずっとあれを覚えていたの――?



  ***


ベッドに沈みこんでいく彼の体は、体温を失ったように冷たかった。

靴を脱がせるのを忘れていたことに気づき、わたしは投げ出された彼の足からスニーカーを引っこ抜いた。