たかが七日間――されど七日間。

世界が変わるなんて期待はしていなかったけど、ただ、ほんの少しの間だけ、わたしは逃げ出したかったんだ。


   ***


「冬休みになったら、みんなでバイトしないか?」


翼(ツバサ)が突然そんなことを言い出したのは、高校の夏服にもようやく慣れてきた、七月のことだった。


「俺の知り合いがN県のスキー場でレストランをやってるんだけど、年末だけ泊まり込みのバイトが必要らしくてさ。友達にも声をかけてくれって頼まれたんだ」


お弁当の匂いが残る、昼休みの教室。

今日の卵焼きはちょっと固かったな、なんて思いながら弁当箱を片付けていたわたしは、翼の提案に思わず身を乗り出した。


「行きたいっ。てか、美那子も行こうよ、ね! 三人で泊まりのバイトなんて、絶対楽しいじゃん」

「そうだね。お父さんに相談してみる」


向かい合わせに座る美那子の腕をつつくと、彼女も乗り気な様子だ。


「じゃあ、決定な。二人とも冬休みは空けといてくれよ」


こうしてわたしたち三人組は、その日のうちに親を説得し、晴れて冬休みの約束を交わしたのだった。


六泊七日、旅行気分のアルバイト。しかも……好きな人と一緒だなんて。

嬉しくて、待ちきれなくて、冬よ早く来いと願った。
夏の花火を見ていても、秋の文化祭でタコヤキを焼いていても、心の中はいつも冬のゲレンデに飛んでいた。


―――だけど。