ミラージュ




…言えなくて。

居心地のいい良平の側を失いたくなくて。

ずっとぬるま湯に浸かってた。

食べないまま溶けてしまったバニラアイスみたいに、あたしの気持ちももう溶けきっちゃって、もうどうしようもできなくなってて。


夏が終わればなくなるのに。

この蝉の鳴き声も、むせかえる様な夏の暑さも、溶けない内に必死に食べようとする、このバニラアイスも。


みんな、なくなっちゃうのに。