甘く、切なく、透明な

 暗い部屋の中で、映画のスクリーンのように光る画面には、「オクシママサキ」の検索結果がずらりと並んでいた。膨大な情報の中から、この機械はどうやってか彼を探し出す。

 大学を卒業した年の冬、沙耶子は一度だけ彼の住んでいた町に降り立ったことがある。

 住所などは知らなかった。だから、結果として、寒い雨の中を闇雲に歩きまわっただけだった。そして、それからまた十年ほど経って、沙耶子はふと今しがたしたように、パソコンに彼の名を打ち込んだ。そのとき、再び沙耶子は奥島に触れた。

 画面に並ぶアドレスの幾つかは、数年前に彼がやっていたネット通販のサイトで、それからその下に出て来るブログは、記事がたった五つしかエントリーされていない、飽きっぽい彼がすぐにやめてしまったブログの残骸だった。

 そこには徹の影も、もちろん沙耶子のことも書かれてはいない。けれど、沙耶子は郷愁から彼の書いた文字を見つめた。