cherry blossom






「……まさか」


はっと湊が急に立ち上がる。


「なんだ湊。心当たりでもあんのか?」


俺の言葉に、少し気まずそうに湊は肩をすくめる。


「あ……いや、べつにそーゆーのはないけど、


……ほら、その……」


めずらしく湊は歯切れが悪かった。


「なんなのさ!」



「湊、なんなんだ」




「だから、その……さ、


よく言うじゃん……桜の下には……


その……死体が埋まってる……って」






ひゅーーーー、と俺たちの間に風が吹いた。








俺は、木の根元から立ち上がった。


「……湊、幽霊だって言いたいのか?」


「ちょ、いくら何でもそんな……」


見るからに玲生は青ざめている。

いや、きっと俺も含めてみんな同じような顔だろう。


「いや……あの!……まさか、

おれもそこまで本気じゃないけど!」


あはは、と湊は笑った。


「そ、そうだよ!まさかね!ありえないありえない!」

同じように玲生が笑った時だった。





「……ごめんなさい……」






再びひゅーーーー、と風が吹いた。











……勘弁してくれよ。



「……やっぱ、幽霊……?」


「……せっかくいいとこ見つけたと思ってたのに」


「まじかよ……」


「……」


玲生たちは居心地が悪くなってきたのか、

もうこの場所は諦めるつもりらしく、

荷物を各自それぞれまとめだした。




……幽霊……。