今日も今日とて追いかけっこの初等部組。

「ふぇええええーん」

「まぁてええええー」

 本人たちは真剣なのだが、傍からみたらちょっと楽しそうに見えなくも無い追いかけっこ。

 生徒会長のお言葉も忘れ、猛スピードで廊下を駆け抜けていくと、廊下の曲がり角からひょっこりと大きなウサギが現れた。

「こらあぁ、廊下を走っちゃだめだよぉ~!」

 ぴょこぴょこと動く、白いウサギの手。

 いつもならば素通りするところだが、花龍は思わず足を止めた。

「……綾小路!」

 それは最近、女の子たちの間で大流行のウサギグッズ、『綾小路』のぬいぐるみだった。もちろん花龍も大好きである。最近は母におやつのマシュマロをウサギにしてもらったり、お弁当は綾小路のキャラ弁にしてもらったりしていた。

「うさぎ?」

 追いかけてきていたシオンも足を止め、廊下の影から顔を出している綾小路に首を傾げる。

「僕の名前は綾小路! 天神学園をパトロールする、正義の味方だよぉ!」

 大袈裟にわちゃわちゃと手を動かす綾小路。

「わあぁ」

「正義の味方? すっげぇえー!」

 花龍もシオンも目を輝かせて拍手をする。