ティーダは地球に行くにあたり、下宿先をどうするかで少し悩んだ。

 というのも、龍一郎と禿鷲の監視(勘違い)のためには対象からイチイチ離れていたのではいけないだろうということで、親元を離れて学園近くに住むことにしたのだ。

 転移魔法陣を設置させてもらっている橘家からは、グリフィノーの血筋の者は家族も同然だから遠慮なく来てほしいと言われていた。

 有り難い申し出ではあったが、ティーダはこれを丁重に断った。

 両親からその旨は伝えてあるはずだが、ティーダは改めて挨拶へと向かった。しかし白い壁に青い屋根の城のような大豪邸は、残念なことに主不在であった。

「後10分ほど早ければ、奏楽(そら)様がいらっしゃったのですが……」

 執事とメイドに申し訳ありませんと頭を下げられ、ティーダは来る日を伝えていなかったことを詫びた。

 それから後日改めて挨拶に来ると伝え、下宿先となる早川家へと向かった。

 ミルトゥワにいたときのように修行をしたかった彼が選んだのが、早川麗龍のところだったのだ。

 早川麗龍はティーダの親戚。従叔父、という関係だ。

 彼は時々ミルトゥワのリザ公家に遊びに来ていて、ティーダとも顔見知りだったので頼みやすかった、というのもある。それほど年が離れているわけではないので、兄のような存在なのだ。

 龍娘流中国拳法の使い手で師範代の彼は、銀行系列の普通の会社員だ。

 そして陰でこっそりスパイごっこ……もとい、正義のヒーローなんかをしている、多分に厨二病を含んだ進路を取った色んな意味で偉大な人物である。

 その偉大な人物に体術の手ほどきを頼んでいた。

 ティーダは新しい生活に心を浮き立たせながら、早川家へと向かう。

 その途中、黒い鳥を発見する。

 随分大きな鳥だ。

 そうだ、あれを土産にしよう。