また別の日。

 今度は花がヤンキーたちに囲まれていた。

 かわいいね花ちゃん、俺たちと遊んでよぅ~、と迫るモブヤンキー。

「大変だ! 冬樹様と仲のよろしい夕城花様が怖そうなヤンキーに囲まれてぷるぷる震えていらっしゃる! ここは僕が強そうな鬼に化けてヤンキーたちを追い払うべきですねはいっ!」

 豆太郎はパッと木の葉を取り出し、頭に乗せて印を結んだ。

「変化!」

 ぼぼん、と白煙が立ち上がり、豆太郎の姿を覆い隠す。

 そうして現れたのは立派な赤鬼。

「こぉら君たち! 女の子をいじめちゃいけないよおおおー!」

 勇ましく叫んでヤンキーたちに挑んでいった豆太郎は。

「ぴゃっ」

 後ろの方で暇そうにしていたヤンキーDにぷちん、と踏まれた。

 豆太郎の変化した鬼は、蟻サイズだった。

 何故そんなサイズに変化した。

 そうしているうちに、妹の危機を察知した夕城武が駆けつけてきた。

「貴様ら、我が妹に対する不埒な行い、断じて許し難し」

 スラリと韋駄天を抜いて睨みつける武の恐いこと恐いこと。さすがは羅刹教諭を育て上げた善の息子、その眼光だけでヤンキーたちを蹴散らしてしまう。

「ぴ、ぴゃっ……花様に何事もなく良かったです」

 豆太郎は人知れず呟いた。