「あ、七原さーん。もうすぐ教授の回診があるので、ベッドに横になっててもらっていいですか?」
看護婦に促される形で、俺はゆっくりとした足取りでベッドに入った。
俺は緊張していた。
これから教授たちにする「やっちゃいけないこと」のこと。そして、今日の午後から美紀がお見舞いに来ること。この二つのせいだ。
だいぶこの病気のこともわかってきて、ストレスがあると、トイレが近くなる傾向にある。
ストレスと何か関係があるのだろうか。そしたら、絶食なんてしていること自体、ストレスで、このまま一生食事がとれなくなるくらいなら、死んだ方がましだ。
ベッドから起き上がって、点滴台を転がしながらトイレに立った。
「あ、七原さん! どこに行かれるんですか?」
「トイレですけど。」
「我慢できませんか? もうすぐ教授たちが来ると思うので……。」
そりゃあんたらの都合だろう。俺だって、我慢ができたらしてる。でも、できないのが病気であって、我慢できるのなら、そもそもこんなところにいない。
俺は看護婦を無視して、トイレに行った。便座に座って、完全に出し切ったわけじゃないが、「やっちゃいけないこと」のこともあるので、5分ほどで切り上げて戻ってきた。
やはり教授はまだ来ていなかった。俺は看護婦に気付かれないように睨みつけた。



