「総回診は確か、10時頃からの予定だから、そうだねえー、12時にここに集合して、結果報告ね! いい? 虚偽報告はダメだからねー? それじゃ、アイル・ビー・バック!」
そう言って、祭はいつものように両手を広げて走り去ってしまった。
まったく、それなら別にここで集合して言わなくても、メールでも電話でもしてくれたら……。
あ、そう言えば俺、祭の連絡先を知らない。
俺から訊くのもおかしいし、祭からも訊かれなかったから答えなかったが、別に知っておいてもいい。というか、この場合、知っておいた方が何かと好都合だった。
訊いてみようか……。しかし、女の子に連絡先を訊くことは、そういうことになってしまう。
そういうこととは……経験がある人なら知ってるかもしれないけれど、そうだ。異性の連絡先を訊くことは、その相手に興味があるということになる。
本人にまったくその気がなくても、中高生の世論はそうなのだ。世論はある種、法律のようなもので、どんなに抗っても許してはくれない、民主主義。
だから、俺は祭の連絡先をこれから訊くことはない。祭の方から訊かれたとしたら、教えるし、別にやましいことは考えない。
こうして見ると、まるで矛盾しているようで、民主主義そのものがフィクションのように思える。



