私は伏見さんと別れ、屋上にやってきた。



病院の屋上と言えば、シーツを干しているなんてのが普通だけど、生憎、そんなのはひと昔前の話か、ドラマが作り出した幻想にすぎないんだなと思った。



現実の病院の屋上は、使われていないヘリポートがあるだけで、立ち入りを禁止されていて、白衣姿の人が隠れるようにして煙草を吸っているだけだった。



シーツを干さないのは、きっと業者に回収と洗濯を委託しているからなんだろうと思う。



しかし、このことは6年前から知っていた。ここで私は、会っているのだ。



紺色のカーディガンを羽織った少女に。



そして、その少女から訊いた話を元に、私は小説を書いている。



完全なるノンフィクション。事実をありのままに書いてきた。



でも、私も知り得なかったクライマックス。聡くんから訊いたらしい話を伏見さんからさっき聞いて、どうやら私は、見当違いをしていたようだ。



綺麗でもなんでもない。残酷な話に私はこの先を本当に書いていいのか、不安になった。