「何? どうしたの?」
祭が小言で訊いてくる。俺は、声を発さないで、ジェスチャーで「隙間から覗いてみろ!」と言った。
おじいさんが入ってきた。よぼよぼのおじいさんだった。
それから、ジョーッと音だけが響き、祭は顔を紅潮させている。自分のことでもないのに、なぜか俺は恥ずかしくなった。
「ふわあぁぁぁ。」
おじさんは、俺たちに見られているとも知らず、わざとらしい欠伸ような声まで発している。終いには、「ガーッ、ペッ!」と痰を便器に吐き捨てていて、すっかり満腹になったからだろうか、吐き気がしてきた。
用を足し終えたらしいおじさんは、点滴台を転がしたが、すぐに止めた。
「おーい、点滴、漏れとるぞー!」
そう言って、俺の点滴台を手も洗わずに触って、何とか点滴が漏れるのを止めようとした。純粋に汚い。吐き気がいよいよ酷くなる。
これはどうにかしなければ、ならない。しかし、どうすればいい? 今ここで戸を開けたら、弁当のゴミと共に、祭がこんにちはしてしまう。
おじさんと祭。未知との遭遇だけはどうしても避けなければならない。
何かいい手はないもんか……考えていたその時だった。
「あー! そのままにしておいてください!」



