祭は言った。「やっちゃいけないことしない?」と。
まるで、何かに対して宣言するかのように、まっすぐと澄んだ目をして。何の迷いもないと言った風な目。俺の苦手なタイプの目をしていた。
「なんだよ、急に。それに、『やっちゃいけないこと』って。」
「やっちゃいけないことはやっちゃいけないことだよーん。面白そうじゃない?」
面白そうじゃないと思った。
「殺人とか銀行強盗でもしようって言うのか?」
「ううん。そういう法に触れるのはダメ。頭の固い大人が作った絶対的なルールの前にひれ伏すことになるだけだし。そうじゃなくて、こう、モラル的にというか、法に触れない程度のやっちゃいけないことをしようってことだよ!」
ますます意味がわからない。やる理由も、何をするかも。
「例えば?」
「うーん、例えば……立ってものを食べちゃいけないとか、人に悪口を言っちゃいけないとかかな。」
「悪口は名誉毀損になることだってあるだろ?」
「切り詰めればね。でも、いいじゃん。そんな軽いのは。」
「罪に軽いも重いもないだろ。」
「どうでもいいけど、聡くんって正論がすべてだって思ってるタイプの人間だよね。ベンチのことと言い。」
正論の何が悪いだろうか。俺にはさっぱりわからない。
正論がすべてだし、それを追い求めて今の国が作られていると思っている。正しい道を歩むには、正しいことが何かを知らなければ……ん? ってか……。
「なんで俺の名前知ってんだよ!」



