「それならいっそのこと、ここから逃げ出せば?」
俺は再び本に視線を戻した。
「逃げても、事態は変わらないんだよ。どうせすぐに連れ戻されるだけだし。」
じゃあ文句を言うなよと思う。今はただ、耐えるしかないじゃないか。きっとそのことは祭もわかっているはずだ。
「でもね、その面白くないことでも、面白くすることはできるんじゃないかなって思うんだよね。」
ああ、それ、どこかで聞いたことがある。確か……。
「『面白きことも無き世を面白く』だっけ? 高杉晋作の。」
「えー? 何それ、知らないんだけど。」
なんだ。てっきり高杉晋作を引用しているのかと思った。
「でも、それ確かに正しいよね。面白くないなら面白くするしかない!」
「それって入院生活をか?」
「その通り。そこでだ!」祭はベンチの上に立った。その拍子にベンチがグラグラと揺れた。
「やっちゃいけないこと、しない?」



