私は祭ちゃんに病院で会っている。それは聡くんのお見舞いに初めて来た時のことだ。



いざ「七原聡」と書かれたネームプレートのある病室の前まで行くと、私は尻込みしてしまった。



聡くんが本当は私と会いたくないんじゃないかと思っていたからだ。



結局、聡くんに会うことは諦め、帰ろうとエレベーターに乗り、一階まで降りた。あんまりにもボーッとしていたせいで、受付前に差し掛かった時、人とぶつかってしまった。



「痛っ! どこ見て歩いてんのよ、馬鹿!」



「ご、ごめんなさい!」



慌てて頭を下げると、そこには紺色のカーディガンを羽織っている女の子が倒れていた。それが祭ちゃんだった。



「まったく。これがたちの悪いヤンキーだったら大変だったよ? 病院はねー、戦場なんだよ!」



意味のわからないことを言って、一人プンプン怒っている祭ちゃんに、私はペコペコと頭を下げ続けるしかなかった。



「まあ、安心しなよ、ユー! 私はそんなに酷い人間じゃないからさ!」



そう言われ、安心して顔を上げると、ニヤニヤとした祭ちゃんの顔があって、一気に不安へと逆戻りした。



「ユー、お詫びにちょっと私に付き合ってくれなーい?」