祭の病室に着くと、医者と看護師長がちょうど出てくるところだった。
「さ、聡くん!」
「看護師長さん。祭は? 祭は?」
看護師長さんは目頭を押さえながら言った。「最期のお別れよ。」と。
先生の話では、容体が急変し、今では記憶も曖昧になっているとのことで、先生や看護師長さん、恭平さんのことでさえ、わからなくなっているのだという。
こんなに酷い状態だったことに、俺は動揺を隠せなかったが、もう逃げないと決めたのだ。俺のことがわからなくても、ちゃんとお別れを言おう。そう決めた。
先生の許しをもらい、病室に入ると、そこにはいつか思い描いたことがある、管に繋がれた祭の姿があり、ベッドの傍で、地べたに膝をついた恭平さんが祭の手を握っていた。
「……聡くん。来てくれたんだね。」
「すみません、恭平さん。しばらく二人っきりにさせてもらえますか?」
恭平さんは黙って頷き、去り際に俺の肩をポンッと叩いてくれた。
このポンッを俺はしっかりと受け取った。



