「坊主。いいか? 逃げても、逃げなくてもきっとお嬢ちゃんはもう助からない。しょうがないことなんだよ。いくら残酷なことでもな。生きることっていうのは、そういうことなんだよ。人間は生まれてくる方法はみんな同じだが、死ぬときは違う。」
「わかってます……十分。」
「そうか? なら後はどうすればいいかわかるな?」
「はい。」
もう迷わない。前田祭の最期を笑顔で見送ってやること。
それが今の俺にできる唯一のことだ。
「で、看護婦への言い訳はどうする?」
「トイレでお願いします。」
「長いトイレだな。」
「しょうがないんですよ。病人なんで。」
俺は点滴の針を引っこ抜いた。
「あとこれ、病室までお願いします!」
走りながら言った。



