「キミが聡くん……だね?」
男はメガネを取って、それをワイシャツの裾で拭いた。
「あなたは、一体?」
「ああ、そうか。知らないのも無理はないな。」男は立ち上がった。
「はじめまして。前田恭平です。祭の父です。」
危うくベンチから転げ落ちそうなほど驚き、慌てふためいた。なんて失礼なことを思っていたのだろう。
「す、すみません! 七原です! いつも祭さんにはその……お世話になってます!」
立ち上がって、深々と頭を下げた。恭平さんは笑って、「いいよいいよ。そんなに改まらなくても。」と言って、俺に座るように促してくれた。
大人の余裕というやつか。すごく気さくそうな人で安心した。



