そんなある日、ベンチに一人の男がやってきた。
歳は40代前半くらいで、メガネをかけていた。
その男は、何も言わずに俺の横であり、祭の特等席であるベンチに腰掛けた。二人掛けとはいえ、隣に知らない男が黙って座るほど、気持ち悪いものはなかった。
「やっちゃいけないこと」だが、俺は決心した。
「すみません、そこ、先約があるんです。」
男は首を傾げた。
「先約? ここは公共の場であって、誰のものでもない。そう言ったのは、聡くん。キミだろ?」
紛れもない正論だった。これは俺が祭に言った言葉でもある。
____ん? 何かがおかしい。
なぜ、この男は俺の名前を知っているんだ!?



