秋が過ぎ、冬が来ても俺は毎日ベンチで待ち続けた。



美紀はちょこちょこお見舞いに来て、会えば大体、祭の話をした。病棟で走ったこと、絶食中なのにトイレで食事をしたこと、教授の総回診で動物の名前で答えたこと、脱走したことを話した時は、かなり怒られた。



彼氏が他の女子のことを話すなんて、きっとタブーだろう。しかし、美紀はどこか余裕があるというか、寛大で、冬場、外で待つのはつらいだろうからと言って、ジャケットをプレゼントしてくれた。



そういえば、祭はカーディガンを羽織っていたけれど、帰って来た時、寒くないだろうか……また脱走して冬物の洋服を買いに行くのもいいな。



祭がいない中でも、俺はいつも祭が帰ってきたら何をしようか、どんなやっちゃいけないことをしようか、退院したら免許を取って、九十九里で星を見よう。などといろんな考えを巡らせた。



そうしていると、何だか隣に祭がいるような気がして、気持ちが落ち着くのだ。