「『今が楽しけりゃそれでいい。』ってよく言うだろ? 就職もせずに遊んでプラプラしてる若者がよく言う言葉だよなあ。でも、本当はこの言葉っていうのは、いつ死ぬかわからない、俺たち入院患者のことを言うんじゃないか?」
「そうですかね……。」
「現にあのお嬢ちゃん、ここの入院長いみたいだぞ? 俺がこの部屋に入院してきたときには、あのお嬢ちゃん、すでにいたからな。」
なんだって……?
「そ、そんなことどうしてわかるんですか?」
「なぜって、見えるから。ほれ!」伏見さんは病室の窓を指差した。
「ここからずっと見てたんだよ。紺色のカーディガン羽織った女の子が一人、意味もなくベンチに座っているのをな。まるで、誰かを待っているみたいだったよ。」
やっぱりそうだ。祭にはお見舞いに来てくれるような友達なんていない。俺なんかお見舞いに来ようとした美紀をやんわりと誤魔化していたにもかかわらず。
祭はずっと一人で、いつ死ぬかわからない恐怖と、たった一人で戦っていたんだ……。
「坊主。過去はどう頑張っても変えられない。それは知っているよな? でも、それと同時に今の積み重ねが過去になるんだぞ?」
今の積み重ねが過去になる。伏見さんの言う通りだ。
俺は、また後悔するような過去を作ろうとしている。



