「あ、あなたたち、大丈夫……って、何してんの!」



もちろんバレた。



「やっば! 聡くん、逃げよう!」



そう言って、祭は両手を広げて走ったが、俺がついてこないのを見て、すぐに立ち止まった。



「聡くん!? ねえ、聡くんってば!」



「こら! キミ、何やってるの!」



俺は、看護婦の制止を訊かず、点滴を自分で引っこ抜き、必死にジャンプをしながら時計の針を戻そうとした。



「聡くん、もういいよ! ねえ、だから!」



「っ! もうちょい!」



呆気にとられる看護婦を他所に、見事な跳躍力を発揮し、俺は時計の長い針を12から7まで戻した。



「よし、逃げるぞ!」



「あ、こら! 待ちなさい!」



俺は祭の手を引いて、中庭まで走った。



時間は戻せた。たった35分だったが、時計の針を戻した瞬間、テレビを観ていたおじいさんも、本を読んでいた兄弟も、看護婦も、もちろん俺たちも、あの場にいたすべての人が、14:35に、過去に戻ったのだ。



中庭までやってきた。もうここまで来ればいいだろうと思い、スピードを緩めようとした瞬間、がくんっと何かに引っかかったような衝撃が伝わった。



振り返った。血の気がサーッと引いた。