「仮に過去に戻ることができるとして、それってやっちゃいけないことなのか?」
祭線に遅れが出た。表情が濃霧になったのだ。
「……やっちゃいけないんだよ。やっちゃいけないからできないんだよ。」
俺の頭の中も濃霧だった。どう頑張って解釈しようとしても、理解できない。
何を言いたいのかわからない。できないのにやろうなんて、矛盾している。でも、そんな矛盾を、こんな濃霧のような表情で言うだろうか。
きっと祭のことだ。これは何かの比喩表現に違いない。
「で、具体的にはどうするんだ?」
「病棟内に団欒スペースがあるのは知ってるよね?」
「ああ。椅子とテーブルがあって、患者や見舞い客の休憩スペースみたいなところだっけ?」
「そう。そこに青い時計が掛けられてるんだけど、その時計の針を巻き戻すことが今日のミッションだよ!」
時計の針を巻き戻す? ああ、そういうことか。
過去に戻るには、時間を巻き戻す必要がある。時間を刻むものと言えば、時計だ。時計は針が進むことに伴って、時間が進む。つまり、逆に針を戻せば、時間も戻る。
しかし、この理論は、時計が時間を司っていることを前提としている。でも実際はそうじゃない。
時間は初めから絶対的なものとしてそこにあった。それを見やすく、わかりやすく視界で表したものが時計だ。
目の前の時計が4時を指し示していても、実際の時間が5時であれば、今の時間は5時だ。そして、4時を指し示している時計は、主君に逆らった愚かな家臣でしかない。
しかし、時計を遅らせることは、時として、他人の時間を奪ってしまうことにもなる。結果的に「やっちゃいけないこと」にはなるわけだ。考えたな。



