しかし、俺のその思惑を邪魔するかのように……ああ、もう馬鹿女め!



スマホを取り出して、大声で電話をし始めたのだ。



「あー、もしもし、春子? うん、うん……へえー、それはやばいね。」



何が「やばいね。」だ。どうせ大したことないくせに、「やばい」と言っておけばいいと思っている。ああ、嫌いだ、この女。病気と一緒に消えてはくれないだろうか。



「ねえ、そうだよね。うんうん。退けって感じだよねー?」



あの女が誰と何を話しているかはどうでもいい。興味ないし、知りたくもない。ただ、声が物凄く大きくて、もうかれこれ5分弱はこの調子。その間、俺は93ページを何度も読み返している。



集中できない。おまけに声が良く透るもんだから、尚のこと響いて、集中できない。



「うんそうだよね! ねえ、退けってね!」



しかし、ここで俺はあることに気付く。