「聡くん、いくらなんでも無理だよー。ムリゲーだよー。」
「いいからその辺に座って見てろよ! ばか!」
「あー! 聡くん、ばかって言った! ばかって言ったほうがばかなんだよー?」
「そりゃ、心外だな。」
心外なんかじゃない。間違いない。俺はばかだ。大ばかだ。でも、ばかでもいい。誰かを喜ばすことができるばか、かっこ悪くて、かっこいいばかだ。
落ちているものは、探しているものだけとは限らない。空き缶や煙草の吸い殻、ティッシュ、パンの袋、軍手、飴の袋……こんなにも汚れていたのに、今まで気付けなかった。
何が優雅だ! 何が研ぎ澄まされるだ! 都合の悪いところを見ようとしなかっただけじゃないか!
「聡くん、もう見つからないかもしれないよ。でも、いいじゃん。無くなるのには無くなるだけの理由があるんだよ。人生ってそういう風にできてるんじゃないかな?」
そんなことを祭の口から聞きたくなかった。それと同時に、必ず見つけなければならない。奮い立たされた。
「聡くん。ほんと、もういいから。さっきも言ったじゃん? 私には連絡するような友達もいないんだよ? スマホ持ってたって意味ないんだって。だから、ほんと……。」
「……ほんと、なんだよ?」
俺は、ピンクのスマホを右手で掲げた。祭の顔が打ち上げ花火のように、ぱあっと明るく咲いた。



