心外だな-だって世界はこんなにも-






病院前のバス停に着き、祭の手を握ったまま走った。周りも気にせず、受付の看守を気にすることも忘れ、中庭のベンチ目指して走った。



「聡くん。ここだよね?」



「ああ、俺の記憶が正しければここだ。」



俺と初めて出会ったあの日、祭はここでピンクのスマホで、友達に電話をしているフリをしていた。



そして、あまりにもうるさくて、俺は「あっちに行ってくれないか?」と注意している。その直後、祭はスマホをその場に落とし、俺に詰め寄ってきた。



「覚えてる! そういえばあの日からスマホ見てなかったよ!」



祭も事のすべてを思い出したようで、二人の記憶が正しければ、祭のスマホはここにあるはずだ。



「この辺、探してみようぜ?」



「でも、もう誰かに持っていかれたか、落とし物として預けられてるかもしんないよ?」



「それでも一応探してみようぜ? 手伝うからさ。」



地べたに膝をついて、手探りで探した。普段なら庭の草取りだってしない。でも、これだけはどうしても見つけ出したかった。