「祭!」
俺は祭の手を引いて、立ち上がった。
「どうしたの、聡くん。別に同情してもらおうとかそういう意味で話したんじゃないよ?」
そうじゃない!!
「帰ろう! 今すぐ!」
たこ焼きをそのまま置いて、駅へ向かって走った。
「ちょ、どうしたの? 聡くん!?」
「いいから、早く!」
祭の青春はもう戻ってこない。
でも、戻ってくるものはある! まだ間に合うはずだ!
切符を買って、俺の思い付きを待っていたかのように、ちょうどいいタイミングでバスが来た。それに慌てて乗り込んだ。
「聡くん! そんな急いで帰ることないじゃん!」
「それがあんだよ! 祭、お前のスマホってピンク色だろ?」
「え!? なんで知ってるの? もしかして、聡くんってテレパシーの使い手?」
そんなのじゃない。
「知ってるも何も、見てんだよ! あの日、祭と初めて出会った中庭のベンチで!」
祭もようやく気付いたらしかった。
そう。俺は、祭がスマホを使っていたところを見ている。



