「私ね、小さい時から身体が弱くて、学校もあんまり行けなかったんだよね。」
その言葉だけで、俺には祭が今までにどんな苦悩を抱えてきたのか、理解できた。
「学校にあんまり行けないもんだから、勉強にもついていけないし、友達もできなくて……中学では陸上部に入ったんだけど、身体がこんなだから、大会なんて出たことないし、練習もろくにできなかったの。幽霊部員みたいなもんかなー。死んでもないのに幽霊ってなんかやだよねー。」
笑えない冗談を挟んで、きっと重い話にならないように工夫している。その気遣いがまた心をギュッと掴んでくる。
「それで、志望校もちゃんと決めて、受験勉強も頑張ったんだけど、結局試験の日に、倒れちゃって。受けられなかったってオチ。つまり、私はJKではないのであーる!」
そう話し終えて、祭は少し冷めたたこ焼きを口へ運んだ。
俺は、そんな祭を励ますことも、茶化すこともできなかった。
祭は俺が憂鬱だと思っていた一日を、どれだけ大事にしていたのだろうか。どれだけ求めていたのだろうか。
そう思うと、当時の自分に恥ずかしく、情けない。出来れば殴り飛ばしてやりたくなった。
青春らしい青春を送れなかった祭が不憫でならない。なんて神様は残酷なことをするのだろうか。
友達もいなかった。きっと恋も知らない。そんなことも知らずに、俺は祭になんて酷い、冷たい態度を取ってきたのだろう。きっと、あの日、祭の持っていたスマホには、友達のアドレスや番号は入っていなかったはずだ。
……あの日?



