ただ、第二印象は、最悪だった。これは今でもはっきりと覚えている。



あれは1年の時、休み時間に隣のクラスの友達に借りていた教科書を返しに行った時だ。



そのクラスに美紀はいて、休み時間に一人、教室の真ん中あたりの席に座って、本を読んでいた。



題名はたしか、野沢尚の「龍時」だった。



俺は、教科書を返し、彼女が本を読んでいる姿が見える場所で、小学生の頃の「遠足のお菓子は300円まで」というクソルールをどうやって充実なものにするかを友達と馬鹿みたいに話していた。



「やっぱり、一番は駄菓子で固めるしかないんじゃね? 事実、俺はそうやってたし。」



「高学年の遠足って何かと『社会科見学だから。』って理由を付けて、300円ルールを正当化しようとしてたよな。俺が大人に対して違和感を持ち始めたのはその頃からかな。」



などと、まあ今思い出してもしょうもないことを、まるで政治問題に対して分析する評論家のように真剣に話していたものだ。恥ずかしい。